フリッツ:やがてこのボランティア活動は僕らにとって欠かせないものになりました。思い切って始めて本当によかった。実は来週、100個目のフェンスが完成するんです。この活動はもう僕ら夫婦のやりがいというだけでなく、賛同してくれたすべての仲間たちの生きがいになっています。

仲間は200人以上に増え、その多くが退職者です。みなが口々に《すばらしい活動だ。社会のためにいいことをしながら、屋外で身体を動かせる》といってくれます。気持ちのいい人たちが集まって、助け合いながら楽しんで活動し、犬を助ける。関係者全員が得をしているんです。

そのすべては義母を亡くした妻の《これから何をして生きていけばいいのか》という葛藤から始まりました。僕自身、自分がこれほど深くかかわるようになると思っていませんでしたよ。

妻があの番組を見て、活動に賛同した。そこから続く道をずっと歩んできたら今につながったのです。リタイアしたあと、真の生きがいをそういうふうに見つける人は少なくないと思います。

リタイアには右脳と左脳のバランスが大事なんです。数学的な思考を好み、表計算が得意で、リタイア後に必要な資金をきっちり計算するのは左脳です。

そして生きがいや自由を求めるのは反対の右脳なんです。右脳は芸術を好み、冒険心があって、未知の世界へ導かれていく。ただ右脳を使うには少々訓練が必要です。アーティスティックな仕事をしていたのでなければ、現役時代はあまり使わなかったかもしれません。

クリスティン:ボランティア活動を通して社会とつながることもできるんですね。

フリッツ:もちろん。目的が明確ですし、屋外で身体を動かすこともできる。そして人間関係も充実します。正直、ボランティア仲間とこれほど強い連帯感で結ばれるとは想像していませんでした。僕ら夫婦にとってはそれがいちばんのリターンだったと思います。

他者のために無償で尽くすのは尊い行為です。ただ、活動を通して知り合った仲間との交流も、それに負けないほどすばらしいのです。金曜の夜に《グランピーズ(訳注:地元の飲食店)へ行かないか?》と誰かがメールを打てば、都合のつく人たちが集まってきます。

みな仲間意識が強くて、自分たちを《ファイドー・ファミリー》と呼んでいるんです。共通の目的で結ばれた家族です。それでいて重苦しい雰囲気にならないようちゃんと心得ていて、たとえば政治の話なんかはしません。

あくまで主役は犬です。身内だけに通じる冗談がいくつもあって、笑い声が絶えません。とても楽しくやっていますよ。

 

※本稿は、『How to Retire お金を使いきる、リタイア生活のすすめ』(クリスティン・ベンツ:著・岡本由香子:訳/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

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