キャメロン:ある晩、母の家を訪ねたら、母がポーチに置いてある、買ったばかりのベンチを見せてくれました。ベンチを見たあと室内に戻って、しばらくおしゃべりしました。そうしたら母がまた《買ったばかりのベンチを見る?》といったんです。
さあ、大変。母はついさっきポーチでわたしにベンチを見せたことを完全に忘れてしまったようです。それで何度も同じ質問をするのは聴覚の問題ではなく記憶の問題なんだとわかりました。
その夜、わたしは母に何もいいませんでした。自宅に戻ってから夫に《ママが物忘れをし始めたの。困ったことになったわ》と打ち明けたのを覚えています。困ったことになったのはわかったのですが、どう対処したらいいかがわからなかったのです。本人に向かって物忘れが始まったようだと伝えるのがとても怖かったです。
わたしは第三者に助けを求めました。母の主治医に電話して《次回、母が来たら認知症の検査を受けるように勧めてください》といいました。医師は母に神経科を受診するよう勧め、母もそのとおりにしてくれました。
ところが神経科を受診したあと、母はなんでもなかったといいました。記憶障害があるのはまちがいないのに。おそらく検査結果を忘れたか、わたしに心配をかけたくなかったのでしょう。
幸いにも母の友人が別の神経科医に会うよう勧めてくれました。わたしも母につきそって結果を聞きにいきました。医師の診断はアルツハイマー病でした。それでわたしは《すぐに弁護士をさがしましょう。必要なときはわたしがママの財産を管理して、医療上の判断ができるようにしないといけない》といいました。