私の家族の場合
私の家族は集まっても何も話すことがない。昔のことは誰もが触れられたくないし、引越しばかりしていて近所の人たちのことなど知らない。
子どもたちの近況くらいしか話題がなく、ひととおり食事が終わるとみんなそれぞれしれーっとテーブルからいなくなる。
タバコを吸いに行く者、仕事に戻る者、ゲームをする者。私はその時間のために、いつも本を持参している。でも心が落ち着かないから読もうとしても文字が滑るばかりで頭に入らない。帰る時間までの時間が果てしない。
なんのために集まっているのだろう。それでも年に2回、数時間くらい会いに行かないと。血のつながった家族なんだから。……家族ってなんなんだろう?
普通の「家族」とは、夫の家族のような感じなのだろうか? 夫の家族に会うと、誰もが家族との時間そのものを慈しんでいる様子に、羨ましさを超えてその場にいるのが苦しくなる。
こんなに愛されて育っていたらどんなに幸せか。こんな家族の中で育っていたら、他人のことも自分のこともちゃんと愛せる人間になっていたのだろうか。
私が求めていたのは、あったかい普通の家族だった。裕福な家庭を羨ましいとも思うけれど、何よりも欲しかったのは、ありのままの自分を受け入れ、愛してくれる家族、会いたい、帰りたいと心から思える家族だ。