詩人の伊藤比呂美さん(右)とシスターの鈴木秀子さん(左)(撮影:岸隆子(Elenish))
両親、元夫、親友と、身近な人を見送ってきた詩人の伊藤比呂美さんは、長年、お経の現代語訳に取り組んでいます。一方、鈴木秀子さんはシスターとして、これまで多くの人の死に寄り添ってきました。宗教の垣根を越えて、人が生きること、死ぬことについて語り合います。(構成:篠藤ゆり 撮影:岸隆子(Elenish))

前編よりつづく

人間は生きることが一番うれしい

鈴木 ところで比呂美さんは、なぜ仏教を学ぼうと思ったのですか?

伊藤 親が老いて、その先の死がありありと目の前に見えているのに、本人たちは死に方がわからない。どう死ぬのか、死とは何かのイメージもない。それなら何かに頼ったらいいのにな、と思ったんです。

仏教はどう? って聞いたら、興味ないってすぐ却下されちゃったけど。それで代わりに私が仏教の本を読んでみたら、ものすごくおもしろくてハマったんです。

鈴木 そういう経緯があったのですね。

伊藤 お経と仏教説話を読んでいるだけですから、仏教徒とも言えないんですけどね。お経は詩のようなものだな、と思って現代語訳していったんですよ。「般若心経」も「法華経」も「阿弥陀経」も全部おもしろかった。

鈴木 そうですか。