汗で発熱するウールの魅力

ウール(羊毛)は汗を吸収して発熱する特性を持っています。これはウールの優れた吸湿性と断熱性によるものです。

その発熱メカニズムは、一本一本の繊維に多くの小さな空気ポケットがあり、湿気を吸収しやすい性質を持っています。体から出る汗や空気中の湿気を吸収し、繊維の内部に多くの水分を保持することができ、ウールはそれ自身の重さの約30%までの水分を吸収しても、表面が湿った感じになりません。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

さらに湿気を吸収すると、その過程で「吸湿発熱反応」が起こります。これは水分が繊維内部に取り込まれる際、化学的なエネルギーが熱に変わる現象です。ウール繊維が水分を吸収することで、わずかに温度が上昇します。

もう一つの機能が保温性です。ウールの繊維は多くの空気を含むため、外部の冷たい空気を遮断し、体の熱を保つ役割を果たします。さらに、湿気を吸収した際に発生した熱を外に逃がさず、保温効果が持続します。したがって、ウールの衣類は冬場や寒冷な状況でとくに効果的に体を暖かく保ちます。

ウール以外の獣毛も、一般的に吸湿性がありますが、ウールほど汗で発熱する機能を持つものは少なく、この点では羊毛に軍配が上がりますが、獣毛はすべて保温性が高く、体温を逃がさない特性が強いため、寒さ対策としては非常に有効です。またふわふわ、つやつや、すべすべといった肌触りの高級感では、獣毛に軍配が上がる点も指摘しておきましょう。

ウールでも「スーパー120」や「スーパー180」などスーツを選ぶ際に素材名を言われることがよくあります。この数字はウールの繊維の細さを表しています。数字が大きいほど繊維が細く、より滑らかで柔らかい質感のウールになります。ただし、繊維が細くなるほど耐久性が落ちる傾向があるため、用途や着用頻度に応じた選択が重要となりますが、高級な素材ほど細く、滑らかなウール糸を使っていることが分かります。