「紡ぎ」と「撚り」
最後に「紡ぎ」と「撚(よ)り」の話を少しだけ。
これはウールに限ったことではなく、綿でもそうなのですが、短い毛の羊毛や綿花から採れた綿毛を少しずつ引っ張り出して糸状に変えていく作業を「紡ぎ(紡績)」と言います。そして糸を複数組み合わせて太くしたり、強度を増したりする作業を「撚り(撚糸<ねんし>)」と言います。この工程を経て、糸そのものの性質が備わっていきます。
もともと細い糸から作れば、一定の強度まで撚ってもそのまま細い糸で滑らかな生地ができますし、逆に太い糸であれば、空気を孕(はら)んで保温性が高く、強度もあるアウターやコートに適した生地ができます。糸ひとつを作るに当たっても様々なケースがあり、それらを見越して、工夫、技術開発が進められてきたのです。
そんな人類太古の時代から原理は同じですけど、ものすごく進歩している技術なのだということを是非とも知っていてください。
※本稿は、『アパレルビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
『アパレルビジネス』(著:久保雅裕/クロスメディア・パブリッシング)
まだら模様のファッション業界を見渡すと、そこには時代が映されている。
ファッション好きから業界関係者まで楽しく読めるアパレルの教養。