今田美桜さんがヒロインを務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)。子どもたちの人気者・アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと、妻・暢さんの夫婦をモデルとした物語です。<朝田のぶ>を今田さん、<柳井嵩>を北村匠海さんが演じています。逆転しない正義を体現した『アンパンマン』を生み出した嵩とそれを支えたのぶの物語はクライマックスを迎えます。1年という長い撮影期間、嵩役に向き合ってきた北村さんにお話を伺いました。(取材・文:婦人公論.jp編集部)
贅沢な時間だった
<2024年9月に高知ロケでクランクイン。1年に渡り、嵩役に向き合ってきた。内向的で繊細だった少年時代を経て、戦争パートでは飢えによる飢餓を表現するために絶食。戦後は実際のやなせさんを彷彿とさせるポップさも演技ににじませた>
正直、嵩に影響されて、自分もすごく落ち込むようになりました(笑)。やなせさんは明るい方なので、落ち込んだ時にはやなせさんの映像を見てエネルギーを摂取して、柳井嵩に臨むのが日々のルーティンでした。ただ、僕は学生時代、基本的にネガティブ人間だったので、嵩役はそこに立ち返る感覚がちょっとありました。
僕自身、それぐらい役と一体となって過ごしていました。1日を通してお芝居をしている時間のほうが長くて、嵩を通して喋っている方が、自分にとってニュートラルな感じになりました。今までなかったことです。
現場を俯瞰で見て、役を主観ではなく客観で捉えることを常に意識してきました。でも、嵩役はどうしても主観になってしまう瞬間が何度もあって。そういう瞬間にすごくいいシーンが出来上がった。贅沢な時間だったと感じています。