納得してもらうには

<『あんぱん』では、絵本『やさしいライオン』や『手のひらを太陽に』などやなせさんが手がけたさまざまな作品が登場する>

ドラマの後半ではやなせ先生が編集長を務めた雑誌『詩とメルヘン』や絵本『やさしいライオン』、絵本『あんぱんまん』など多くの皆さんが知ってくださっている作品が登場します。やなせスタジオとしては、それらの作品をどのようにドラマに反映したら良いか、ドラマを見てくださっている方々がやなせ先生の作品と納得してくださるにはどうしたら良いかという点に重点を置いて協力しました。

<第110回で、ラジオドラマとして取り上げられた作品『やさしいライオン』は、母親がわりの犬・ムクムクに育てられたライオン・ブルブルの物語。成長してムクムクと離れたブルブルは、ある日檻をやぶってムクムクを探しに出かけ――>

やなせ先生が亡くなる1年ちょっと前の2012年ごろ、やなせ先生が突然、「寝ている部屋の壁を破って犬とライオンが飛んできたら怖いだろう」と言われました。「はい、ものすごく怖いです」「怖いから警官を呼ぶより他ないだろう」とも言われました。

この時、やなせ先生の絵本やお話は幼児向けの優しいお話だけではなく、現実に起こりうる社会問題も入っているのだと感じました。やなせ先生を知るにはこのことは大切だとも思いました。ただし、やなせ先生はこれ以上話してくれませんでした。