「そのうち仕事が減るから…」

<昭和48年、やなせさんが54歳のときに絵本『あんぱんまん』が出版された。アニメ『それいけ!アンパンマン』の放送開始は昭和63年。実はアニメ企画が進んだころ、暢さんに乳がんが見つかり、闘病生活に入った>

暢さんは、アンパンマンの人気が続くとは考えていませんでした。これまでモノを書いて本を出して生活が成り立ってきたからでしょう。当時は、暢さんだけではなく、アンパンマンに関わった人たちはみんな、こんなに大きなビジネスになるとは誰も思っていなかったんです。

暢さんからは、「うちの人は編集者とうまく付き合えないから、多分そのうち仕事を干されて、収入も減る。アシスタントも雇えなくなる。だからその時には、あなたが色を塗ると言ってね。自分から言ってね」としつこいぐらいに言われました。

その後、お亡くなりになったのですが、それくらい、やなせ先生のことを心配していましたね。