嵩から感じるやなせさんの優しさ

ドラマも終盤になりました。放送が始まった当初は、嵩役の北村匠海さんは地味過ぎるのではないかと思っていたんです。でも、朝田家の人たちや友人たちとのちょっとした挨拶や会話などを観ているうちに、嵩から、やなせ先生の無理をしない優しさが感じられるようになって、やなせ先生の普段の人柄を思い出しました。

やなせ先生が以前、取材で「やなせ先生の生活は面白いですね」と言われた時の答えは、「漫画家は作品が面白いのであって、本人は少しも面白くありません」。北村さんはこの話をどこかで聞いて参考にされたのかなぁと思っています。

嵩を演じる北村匠海さん(右)とのぶ役の今田美桜さん(『あんぱん』/(c)NHK)

のぶ役の今田美桜さんが「嵩!」と呼ぶたびにセリフとは裏腹に優しさが滲み出て、実際の暢さんの毅然とした優しさが思い出されます。ドラマも終盤になって、成長したのぶは今はあまり走らなくなりましたね。

戸田恵子さん演じる薪鉄子先生の秘書として働いているのぶの姿、例えばメモを取る仕草などに暢さんらしさを感じて観ていました。

『あんぱん』を暢さんがご覧になったら、「嵩さん、素敵な俳優さんが演じてくれて綺麗すぎよ」と話していたと思います。やなせ先生と暢さんは、そういうことをしっかり言い合える仲でした。やなせ先生の方は「のぶ役が美桜さんでよかったな」って言ってるんじゃないかな。

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