本来知らせるべきこと

たとえば東京都の場合、単身世帯の最低生活費は月13万円程度と定められており、年金収入との差額は生活保護で補填される仕組みがあります。本来であれば、こうした制度を丁寧に紹介し、視聴者に「そうなったときには、手を差し伸べてもらえる方法はある」と知らせるべきです。

にもかかわらず、「気の毒ですね」と言うばかりで、何の支援策も紹介せずに終わってしまう報道は、車にはねられて倒れている人を前に「大変ですね」と言いながら、ただカメラを回しているようなものです。

『65歳、いまが楽園』(著:和田秀樹/扶桑社)

それだけならまだしも、そうしたケースをあたかも「誰にでも起こりうること」として煽るような構成になっているのですから、もはや悪意さえ感じてしまいます。

ワイドショーというのは、つくづく人々の不安を煽ることに長けているメディアなのだなと、私は感じざるを得ません。