血の繋がりよりも家

それで先に結論を言ってしまうと、江戸時代においては重要なのは家の繁栄、もしくは継続であって、血の保全ではない、ということです。血の繋がりよりも家が大切、ということなのです。

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以前にも紹介しましたが、松平清武(1663~1724)という大名がいました。館林藩主となり、石高は最終的には5万4000石。

さほど大きな領地を領有していたわけではありませんし、幕政に重きをなしたわけでもない。この人の特異性は、まさに「血」にあります。

彼の父は3代将軍家光の子である甲府藩主の綱重。同母の兄は6代将軍家宣です。ですから、7代将軍家継が嗣子なくして夭折した後、もっとも当時の将軍家に近い血縁者が清武だった。でも、8代将軍には紀州藩主の吉宗が就任したことはご存じの通りです。