イメージ(写真提供:Photo AC)
ライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間勤務しながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります

やなせたかしさんの「わかりやすい詩」に感動して、せっせと投稿

NHKの連続テレビ小説『あんぱん』で、漫画家・柳井嵩(北村匠海さん)が、詩の才能を発揮しだした頃に、私の友人から嬉しい電話があった。「『あんぱん』を見ていて思い出したけれど、『詩とメルヘン』を知ったのは、あなたのおかげで、良い雑誌だった。没の連続なのに、めげないあなたは偉かった」と言われたのだ。『あんぱん』は、やなせたかしさんの奥さんを主人公(柳井のぶ役は今田美桜さん)にしたドラマで、私は放送開始から見ている。

友人の電話から、失敗ばかりの私の人生を振り返り、やって良かったと思っていることの一つが、やなせさんが責任編集をしていた『詩とメルヘン』(サンリオ発行、1973年創刊、2003年休刊)への投稿だった。創刊当時、やなせさんは54歳だった。

『詩とメルヘン』は誰でも投稿ができ、詩が入選すると、プロのイラストレーターが詩のイメージを見事に拡げる絵を描き、見開きのページで掲載されるのが最高の魅力だった。原稿料もいただけた。やなせさんは、エッセイや入選した作品ごとに感想も書いていた。有名な詩人、プロのシンガーソングライターの詞も掲載され、知識が豊富になる月刊誌である。

やなせさんは、この仕事を30年間続け、「編集、企画、ルポ、挿絵、それから詩の選も絵の選も、とにかく全部一人でやっていたのでね。表紙も自分で描いていたし、自分の収入はほとんどなしという仕事だったんで」(『何のために生まれてきたの?』(やなせたかし著、PHP文庫、PHP研究所、2024年発行)とあり、サンリオでの『詩とメルヘン』の出版は、赤字で終わったそうだ。