自然に囲まれた山梨の家では、どこで演奏するのも自由(写真提供:鰐淵さん)

そんなわけで半世紀ぶりにヴァイオリンを手にしたものの、最初はキーキーと変な音が出て、音楽どころじゃない。やっぱりダメかなぁと思いつつも、練習しているうちに少しずつ音が出てきて。「あ、もしかしたら昔の曲、弾いてもいいかも」と思えるようになったのです。

子ども時代と比べると落ち込みそうなので、比べないと心に決めて。とにかく、できる限りのことをやってみようと思いました。

本当は一日に4時間とか5時間とか決めて練習すればいいんでしょうけれど、私はそれができないんです。まず、自分が何かに心動かされ、音を奏でたいと思ってからでないとやりたくない。ワガママな人間なんでしょうね。

山梨では地元のラジオ局がいい番組を放送していて、いろいろな演奏家のクラシック音楽、詩や文学の朗読も聞けます。そういうものにも刺激を受けますが、何より大きな力になってくれるのが自然です。近くの野原で大の字に寝っ転がって空を見上げると、風がすごくさわやかで、どこまでも広くて。