寛大で我慢強い夫

近所の方が、畑で採れた野菜を玄関の前に置いてくださるのですが、それがそのままになっていると、私は気になってしょうがない。「新鮮なうちに茹でておかないと悪くなる」と思うから、つい細かいことに口出ししてしまいます。

「ホウレンソウは中に入れた? 濡らした新聞紙に包んでおいて」「出汁用の昆布は沸騰させちゃいけないよ」等々……。

『人生、山あり“時々”谷あり』(著:田部井淳子/潮出版社)

普通の男性なら怒り出すかもしれませんが、そこは寛大で我慢強いのがうちの夫。“七十の手習い”で、出汁の取り方を一から学んでくれました。夜のうちに昆布を水に入れ、お湯が沸騰する直前に取り出して、自分で削ったかつお節をどっさり入れます。

「かつお節を入れたら、煮立たせないで、蓋をして蒸すだけでいいんだからね」と、口を酸っぱくして言う私。政伸もメキメキ腕を上げ、今では出汁も上手にとれるようになり、多めに作って冷蔵庫に入れておくようになりました。