変わり始めた勤務制度

私は大学を卒業した後、銀行を皮切りに、外資系のコンサルティングファームであるボストン・コンサルティング・グループを経て、不動産デベロッパーである三井不動産で働きました。

正直、この間の働き方は相当に激しいものでした。コンサルティングファームでは、社員は個人事業主のようなもの。制度上では休暇も出社時間もかなり自由ではありましたが、実際には休みはほとんど取れず、深夜、休日に働くことも当たり前でした。

三井不動産に勤めた30代から40代前半にかけ、私はオフィスビルの取得や開発、証券化という仕事をしましたが、この時の働き方も滅茶苦茶。

ほぼ毎晩、深夜まで仕事。あまりに深夜残業が続いていたため、会社の前に並ぶ個人タクシーの運転手さん、そのほぼ全員が私の自宅の場所を知っていたくらいです。ようやく迎えた週末の朝も、上司からの電話で叩き起こされ、しばしば出社を命じられていました。

ところが現在、そのような働き方は本人どころか、会社からも望まれなくなってきています。

『街間格差-オリンピック後に輝く街、くすむ街』著:牧野知弘(中公新書ラクレ)

多くの企業で勤務制度そのものが変わっており、コロナが流行る前から、すでにいくつかの大企業ではフリーアドレス制が採用されています。実際に、オフィス内に自分の固有のデスクがなくなり、9時から5時まで、といった勤務時間の考え方が希薄になったという会社が増えているそうです。

社会的には、会社まで来ることなく自宅や自宅近く、あるいは取引先近くのサテライトオフィスやコワーキング施設で終日仕事、といったいわゆるテレワークが多く導入され始めています。

なおコワーキング施設とは、その施設の会員がオフィスを自由に使えるというもので、デスクで仕事をしたり、中で会議や打ち合わせをしたりすることが可能となっています。

こうした施設は当初、歴史が長く規模の大きな大企業より、まだ若くて小さいスタートアップのような組織のためのシェアオフィス、などと認識されていたと思います。

しかしあらためて実態を調べると、日本に上陸した米国のコワーキング施設WeWork や三井不動産が展開するWORK STYLING の会員の多くは大企業なのだそうです。