「オフィスがない」ことを実は会社も望んでいる

企業側にとって、オフィス経費は重い固定費です。頻繁には使わない会議室を維持したり、ほとんどの時間、外出している社員のためにデスクと椅子を用意するのは経費の無駄でした。

もしこうしたオフィス機能をコワーキング施設などで賄えるようなら、かかっていた固定費を変動費へと振り替えることができます。また施設で他社の社員らと交わる中、新たな発想やイノベーションが生まれるチャンスも増えます。上手く使いこなせたら、企業側にとってのメリットも大きいのです。

私の知り合いのとある大手製造業の若手社員は、1週間のうち会社に出社するのは1、2日程度、しかも9時から5時まで会社のデスクにずっと座ることはないと言っていました。

彼は日中、自宅近くのコワーキング施設で働き、夕方はそこから子供を保育園に迎えに行き、そのまま自宅に帰ることが多いそうです。彼のカバンの中身を見せてもらえば、中にはパソコンや情報端末がぎっしりと詰め込まれていました。

「これさえあれば、どこででも仕事はできます」

彼にとっての会社は最早「オフィス」という形を取っておらず、あくまで「情報空間」の中にあるように、私の目には映りました。

最近スターバックスやタリーズといったカフェへ平日の昼間に行くと、ノートパソコンを叩いている人をよく見かけます。コワーキング施設の会員にならずとも、場所と時間を自由に使い、仕事をする勤労者が確実に増えていることを実感させられます。