水族館同士で物々交換――江戸の“獲物”を長崎で“展示”
水族館に多少行ったことのある方なら分かるだろう。北海道の水族館で、やけに派手な熱帯魚が展示されていたり、南の方の水族館に寒流域の魚がいたり……。そりゃそうだ、道民だって熱帯魚が見たいだろうし、南の方の人だってタラバガニやホッケを涎をたらしながら見物したいだろう?
しかし、そんな地元で採れないもの、いったい全体どうやって入手したのだろうか? もちろん一つの方法は、先述の業者からの購入だ。そしてもう一つが、園館同士の融通や物々交換である。
例えば、同じ会社が運営している複数の園館が、非常に離れた地方に存在することがあり、その中でそれぞれの地元の生物が融通されることがある。また、例えば立地の離れた水族館同士が、密な提携を結んでいることがある。これは姉妹館、もしくは提携館などといったりするが、こういう園館同士ではスタッフの交流のほかに、展示生物の交換も行われている。
例えば北海道の市立室蘭水族館(室蘭民報みんなの水族館)は、アクアワールド茨城県大洗水族館(茨城県)と生物を交換したり、鶴岡市立加茂水族館(山形県)からクラゲを融通してもらったりしているそうだ。実際、筆者が室蘭水族館に赴いた時には、水槽に多種多様な暖海性のサメの仲間が展示されており、またクラゲコーナーには見たことのない海外種のクラゲがいた。
アクアワールド・大洗はサメで、加茂水族館はクラゲで有名。そう、北海道沿岸で採集されないこれらの生物を、北海道の皆さまに見てもらうことができるということだ。これらは提供元の水族館の宣伝にもなるから、まさにウィンウィンであるらしい。商売敵のようで、意外と水族館の現場同士は仲がいいものなのだ。