センターを取らせる――目玉の生物は見てもらえる水槽に
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」とは、最近一万円札を引退した某諭吉先生の書にある言葉だ。しかし、世の実態は全くそんなことはなく、例えば俳優にも“主役級”のスターと、“脇役専門”のようないぶし銀の人がいる。もちろん後者がいるからこそ前者が輝けるというものだが、やはり知名度、人気に関しては主役級の俳優が抜きんでる、そんな世知辛い世の中なのだ。
いきなり何を言い出すんだ? と思うかもしれないが、水族館の生き物にも“主役”と“脇役”がいる。例えば、水族館と聞いて多くの人が思い浮かべるような、大水槽の中を優雅に泳ぐジンベエザメやマンタは、圧倒的な主役だ。
しかし、同じ大水槽に入っている小魚、小型のサメ、地味なエイ、あと名前も知らないハタやフグ……この辺は悲しいかな、多くの観客にとっては脇役という扱いになる。多数の生物を飼う水槽では、得てして「大きくて」「活発に泳ぐ」「主に魚」が主役になり、逆に海底に棲むおとなしい生物は脇役になりやすい。例外はガーデンイール(かの有名なチンアナゴの仲間)ぐらいなものだ。

たくさんの小さな水槽を集めたようなコーナーにも、同じことが言える。例えば、“銃弾のパンチ”を放つことで有名なモンハナシャコ。緑を基調とした極彩色を誇るあのシャコは、主にコーナーの中央部で主役を張っている。同じシャコでも、地味~な普通のシャコなら端っこの水槽にいることが多い。
クラゲだったら、鮮やかで大きなアカクラゲや、大量のミズクラゲの群れが中央にいて、その両脇をタコクラゲやサカサクラゲが固め……となり、小さくて地味なクラゲがセンターを張ることはない。まして、ウニやナマコは大抵“モブキャラ”程度の扱い、これらが主役を張る水槽なんざ、激レアも激レアだ。そんな感じで、どの生物が“金がとれる”のか、水族館側も分かっているのよ。