特殊なデビュー方法――その名は「企画展」「特別展」
最後に、ちょっと特殊な方法でデビューする生物を紹介しておこう。
その前に、水族館や博物館で定期的に行われる「企画展」「特別展」についての紹介をしておかねばなるまい。
水族館においては、メインコーナーとして、いついかなる時も入場料のみで見られる展示がある。これを「常設展」という。
「そんなの当たり前じゃないの?」と思った方。何度も同じ水族館に足を運んでみてほしい。一部、訪れるたびに水槽の構成がガラッと変わっているコーナーがあるはずなんだよね。これが「企画展」または「特別展」と呼ばれる代物だ。
そう、水族館や博物館では、シーズンごと、もしくは年度ごとぐらいに、目玉となる展示を企画製作しているものなのだ。
有名なところで言うと、科学博物館で「大恐竜展20XX」(XXは西暦)みたいなPRを見たことがある人、いるんじゃない? 大抵の水族館ではそこまでの大掛かりなものはやらないが、常設展の一角のミニコーナーに、テーマに沿った水槽や展示物を並べていることは多いのよ。この企画展・特別展のテーマは例えば、「東京湾の生物」「ウミウシの仲間」「砂に潜る生き物たち」など、様々なものが考えられる。
何が大事なのかというと、そのテーマを、予備水槽での控え組にあわせて企画することができるということ。
言い換えれば、「常設展には訳あってデビューさせられないが、どうしてもこれを見せたい……」という生き物がいる場合、その生き物を主役にした企画展をつくってしまえばいいのだ! 一部の生き物は、そんな裏ワザのような方法で、展示にお目見えしている。……まあ、企画展・特別展は当然一時的なものだから、そういう生き物は降板も早いんだけどな。
一定の期間ごとに製作しなければならない企画展は、多大な労力を必要とするので、水族館側の負担も大きい。一方で、PR効果により、集客力は絶大だ。何より同じ展示*を見て客が飽きるのを防ぎ、目新しさを加える意味もあるしね。
*先述の通り、常設展の展示水槽にも生き物の出入りがある。そして何より生き物である以上、再訪したときに前回とまったく同じ展示があるなんてことは絶対にない。一応、マニアとして付記させていただこう。念のため。