生前葬でみんなにご馳走をふるまいたい

数年前からは終活も始めました。と言っても、私の場合は、自分の研究を次の世代に受け継いでもらうための終活です。現在、私の自宅を学会の事務所にしている生活史研究所では、日本家具の歴史を教えていた京都女子大学の教え子たちが、スタッフとして働いてくれています。

日本家具史の研究は海外では注目されていて、外国向けの本を2冊出していますが、日本ではまだまだこれからです。今は、いくら熱心に研究をしてもほとんど収入にはなりません。でもこの先、必ずや脚光を浴びるはずですから、私がいなくなった後も教え子たちには研究を続けてほしい。

そのためには経済的な基盤が必要です。そこで、現在は私の名義になっている3軒の家を、3人のスタッフに1軒ずつ相続できるように遺言書を書いて、公証役場で手続きを済ませてきました。家賃の要らない住まいがあれば、研究が続けやすくなるでしょう。

そうそう、終活と言えば、生前葬もやりたいと思っているんですよ。そう思うようになったのは、以前、インドネシアに行ったときに見た葬儀がとても興味深かったから。

高床式3階建ての小屋の一番上の階に亡くなった人の棺桶が安置されていて、1階の中央には故人の等身大の木像が座っている。で、その木像が「みなさん、どうぞ食べてください」というポーズで、葬儀に訪れた人たちにご馳走を勧めているんです。

こんなセレモニーを、自分が生きているうちにやれたら楽しいなって。これまでの人生でご縁があった人たちを招き、私がご馳走を作って、みんなで楽しく食べる。その代わり、お葬式はしない。死んだ後に誰が来てくれても、自分では知りようもないですからね。

まだ死ぬ気がしないので、いつ生前葬をやるかは今のところ未定です。(笑)