納得はできないが責任は自分にある

社内ではすぐに立ち上げた危機管理チームが昼夜を問わず情報収集を行っていた。

ほかにできることはないのか。苦しんでいるお客様のことを思うと胸が痛む。

お客様のために会社がすぐにすべきことはなんだろう――。

僕は、このとき、「ミクニ マルノウチ」の3日間の自主休業を決断する。自分から「お店を閉めます」と手を挙げることにしたのだ。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

感染して苦しんでいるお客様が現実にいるのだから、原因物質も感染経路もまだ不明ではあるけれど、とにかくすぐに店を閉めて、店内をくまなく徹底的に消毒しよう。それが僕らが今すぐやるべきことだ。

それで保健所に「店を閉めます」と申し出た。

「三國さんがお認めになるなら……」と保健所の担当者は言った。

レストラン「ミクニ マルノウチ」で34人食中毒――。

翌日の新聞には、こんな見出しが躍った。

記事には「千代田区は同レストランを7日間の営業停止処分にした」とあった。

3日間の自主休業を申し出ていたが、7日間の営業停止処分を受けることになった。原因不明の中で、納得できかねる気持ちもあったが、つらい思いをさせてしまったお客様に対して大きな責任があるのは事実だ。

僕はミクニグループのWEBサイト上で、事実をすべて公表し謝罪した。さらに、こちらで調べたデータもつけてSRSVについての注意を喚起した。

それからは猛烈な逆風の中、謝罪や説明に走り回ることになった。

同時に、保険会社をとおして保険の手続きを始めた。被害の状況を取りまとめてお客様の窓口になってくれた方に連絡をし、入院や通院、投薬治療などにかかった費用についての証明書の提出をお願いする。

翌日返事が来たが、なんと「誰も病院へ行っていません」と言う。だから、医療機関や薬局への支払いはゼロ。自宅で様子を見ているうちに全員が治癒。軽くてよかった、と思うべきなのだろう。