『赤い糸 輪廻のひみつ』(c)2023 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

多くの傑作青春映画を世に送り出してきた台湾映画界。その中でも、『あの頃、君を追いかけた』で強烈な印象を残したギデンズコー監督2021年作品(日本:2023年公開)『赤い糸 輪廻のひみつ』が、今、日本で異例のロングランヒットを記録しています。上映権の関係で今年の11月までしか劇場公開できないという切迫した状況にもかかわらず、「ラストスパート」として驚異的な盛り上がりを見せている本作。さらに、その監督が「絶賛した」という新作、ジュアン・ジンシェン監督の『ひとつの机、ふたつの制服』(原題『夜校女生』)も10月31日から日本公開予定です。ギデンズ・コー監督インタビューの前編では、『赤い糸 輪廻のひみつ』の誕生秘話や、監督の哲学としての「青春」への思いを伺いました。(取材・構成:野辺五月)

台湾青春映画が豊作

映画ファンでなくとも、近年日本で話題になる台湾映画に、「青春もの」が多いことにお気づきかもしれません。古くは1980年代から90年代にかけて世界を驚かせた「台湾ニューシネマ」(※1)の旗手、ホウ・シャオシェン監督の『風櫃(フンクイ)の少年』(1983年)、エドワード・ヤン監督の『クーリンチェ少年殺人事件』(1991年)といった傑作から、イー・ツーイェン監督の『藍色夏恋』(2002年)を経て、日本でも大ヒットしたフランキー・チェン監督の『私の少女時代  OurTimes 』(2015年)など、多種多様な作品が上陸しています。

更に近年では、リメイクも話題となった『1秒先の彼女』(2020年)、劇場版が公開されたドラマ『時をかける愛』(2022年)、日台共同制作の『青春18×2 君へと続く道』(2024年)といったように、世代やジャンルを超えて、台湾の青春映画は継続的に日本の観客の心をつかんでいます。

中でも、台湾映画=青春ものというイメージを決定づけたのが、2011年に公開されたギデンズ・コー監督の『あの頃、君を追いかけた』です。台湾での大ヒット後、アジア全域(※2)で人気を博したこの作品は、監督の代名詞として強烈な「青春の象徴」として日本の観客の心に刻まれています。

そんな台湾映画の巨匠、ギデンズ・コー監督の2021年の作品『赤い糸 輪廻のひみつ』が、今、日本で異例のヒットを記録しています。2023年末に小さな配給会社(台湾映画社、台湾映画同好会)のもと公開された本作は、単館系の劇場から口コミで人気が広がり、一時は終映かと思われましたが、ここに来て急激に盛り返し、驚きのロングランとなっています。

しかし、この『赤い糸 輪廻のひみつ』(原題『月老』)は、上映権の関係で今年の11月までしか公開されないという事情があります。その後の公開は未定という状況にもかかわらず、まさに「ラストスパート」と言わんばかりの盛り上がりで、劇場は連日熱気に包まれています。

そのギデンズ・コー監督が「絶賛した」というキャッチコピーのもと、ジュアン・ジンシェン監督の新作『ひとつの机、ふたつの制服』(原題『夜校女生』)も10月31日(金)より日本にて公開されようとしています。

この特別なタイミングを捉え、私たちはギデンズ・コー監督にインタビューを試みました。

なぜ台湾映画は日本の観客の心を打ち続けるのか? 『赤い糸 輪廻のひみつ』の数奇なヒットの秘密から、監督の創作哲学、そして彼が強く推す新作の魅力まで、台湾青春映画の秘密を掘り下げます。