『赤い糸 輪廻のひみつ』(c)2023 MACHI XCELSIOR STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED.

多くの傑作青春映画を世に送り出してきた台湾映画界。その中でも、『あの頃、君を追いかけた』で強烈な印象を残したギデンズ・コー監督の2021年作品(日本:2023年公開)『赤い糸 輪廻のひみつ』が、今、日本で異例のロングランヒットを記録しています。上映権の関係で今年の11月までしか劇場公開できないという切迫した状況にもかかわらず、「ラストスパート」として驚異的な盛り上がりを見せています。さらに、その監督が「絶賛した」という新作、ジュアン・ジンシェン監督の『ひとつの机、ふたつの制服』(原題『夜校女生』)も10月31日から同時期に日本公開となりました。ギデンズ・コー監督のインタビュー前編では、『赤い糸 輪廻のひみつ』の誕生秘話や、監督の哲学としての「青春」への思いを伺いました。後編では、ギデンズ・コー監督の尽きることのないクリエイティブの秘密を深掘りします。なぜ彼の作品は観客を熱狂させ続けるのか?彼が強く推す新作『ひとつの机、ふたつの制服』の魅力とは?台湾映画の持つ「青春」の普遍性を紐解きながら、日本と台湾、映画の未来について語っていただきます。(取材・構成:野辺五月)

影響を受けた作品は…

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――多様なジャンルを融合させる監督の現在の作風は、どのように確立されたものですか?

 残念ながら、創作スタイルは意図的に確立されたものではありません。僕はこういう人間だったのかとか、特定の構図に特に惹かれるとか、いつも特定の俳優と組みたがるとか、ちょっとした下ネタで主人公に恥をかかせないと気が済まないとか、ヒロインを優等生にしたがる悪い癖とか、重要な女性キャラクターにポニーテールをさせずにはいられないとか……映画を撮り続けるうちに、そんなことに気付かされました。

カッコイイ言い方をすれば「スタイル」なんだろうけど、それって率直に言えば、つい無意識にやってしまう悪習から抜け出せないでいるだけなんですよね。

――その無意識な「癖」が監督のスタイルになっているのですね。では、特に影響を受けた作品やコンテンツ、国内外の映画について教えてください。

 創作面で影響を受けた台湾映画は特にないかなと思います。もちろん、好きな台湾映画はたくさんありますが、影響を受けたとまでは言えません。香港映画だと、俳優としてのチャウ・シンチー(周星馳)とジョニー・トー監督の作品からは数えきれないほど沢山の影響を受けています。※1

――チャウ・シンチーは日本だと『カンフーハッスル』や『少林サッカー』の監督業イメージが強いですが、影響を受けたのは俳優時代の方なのですね。

1970、80年代生まれの台湾人は、チャウ・シンチ―が主演したコメディに大きな影響を受けていますよ。

――他にはどんな作品からの影響がありますか?

僕が最も大きな影響を受けた映画は日本映画の『いま会いにゆきます』(04)で、予告編を見るだけで涙が出るほどです。感情面で重要なシーンを撮影する前には、時々『いま、会いにゆきます』の予告編を見て、胸をいっぱいに満たすようにしています。