(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
バスは、地域の人々の移動手段として重要な役割を果たす存在です。しかし、一般社団法人交通環境整備ネットワーク相談役の佐藤信之さんは、「近年、多くのバス会社で運行本数削減や路線の廃止が相次いでいる」と語ります。そこで今回は、佐藤さんの著書『日本のバス問題-高度成長期の隆盛から経営破綻、再生の時代へ』から抜粋してご紹介します。

東京オリンピックに向けたBRTの構想

2020年(令和2年)東京オリンピックでは、臨海部の晴海地区に選手村が建設されることになり、東京都(当時舛添要一知事)は、その輸送手段として、2014年(平成26 年)8月にバス専用車線を整備したBRT(Bus Rapid Transit。バス高速輸送システム)を導入することを発表した。この時点では、東京駅や銀座など複数の地点から都道環状2号線(当時建設中)経由で晴海の選手村や有明の競技会場、お台場まで運行する構想であった。

東京都は、民間からの提案を募り基本計画を策定することを決定。2014年10月、京成バスと都交通局を事業協力者に選定した。基本計画が決定した段階で運行事業者を公募する予定とした。

2015年3月には基本計画の中間報告があり、案では、都心は東京駅や銀座、新橋駅から、さらに運行開始に間に合えば虎ノ門バスターミナルから、環状2号線を通り、勝どき、有明テニスの森などを経て、東京ビッグサイトやりんかい線の東京テレポート駅に停車するとした。通勤需要の高い都心と勝どきの間はシャトル輸送を行い、晴海地区では数ヵ所の停留所を巡るループとなるとした。

車両は、従来のディーゼルバスのほかに、燃料電池バスや、ハイブリッドのバスも導入。最終的に環状2号線区間ではピーク時に2分間隔で運転する。運行開始時の輸送力は1時間最大2600人。五輪後、選手村をマンション(晴海フラッグ)に再開発した後は、輸送力を1時間最大4400人ほどに高めるとした。

2015年、京成バスを運行事業者に選定、2017年春に官民出資により新会社を設立するとした。

しかし築地市場の豊洲への移転が遅れたため、市場跡地に計画していた環状2号線の建設が始められなかった。そのため新会社の設立を延期した。

<『日本のバス問題-高度成長期の隆盛から経営破綻、再生の時代へ』より>