妻にそそっかしさがあることを改めて知った
ところが思いがけないところに落とし穴(?)がありました。ある晩家族で夕食を囲んで幼い頃の昔話に花が咲いている時の話です。妻が両親からいつも「憲子は粗忽者だ」と言われていたというのです。聞いた時は一瞬「ソコツモノ」って何のこと? と思いました。
「粗忽」というのは「そそっかしい」「おっちょこちょい」という意味ですが、私はそのように人を見たことはありませんでした。言わば私の頭の中の辞書には「粗忽」という言葉はなかったわけで、当然のことながら妻を粗忽者だなどと思ったことは一度もありません。
しかし、妻は続けてこう言いました。小学生の頃本を読みながら歩いていて電柱によくぶつかったことがあると。それを聞いた途端長年抱いていた疑問が解けました。結婚する前の話です。当時の東京の目抜き通りには都電という、どこまで乗っても15円というチンチン電車が走っていました。
妻はある日友人たちと有楽町に行こうとして都電に乗ったそうです。妻が乗りがけに車掌さんに「行きますか?」と訊いたところ、車掌さんは快く「行きますよ!」と答えてくれたとのことです。
ところが電車は有楽町とは違う方向へ走っていることに気づき、車掌さんに「さっき行くと言ったじゃないですか」と問うたそうです。すると帰ってきた答えが「行きますか? と訊かれたので、行きますよと答えただけです」
愛嬌として笑って済ませる話ですが、その時は「女性というのはこういう思考法をするものだろうか」と真剣に考えたことをよく覚えています。妻は3人姉妹の長女でしっかり者というイメージが強かったのですが、その反面こんなそそっかしさがあることを改めて知ることができました。
そう言えば、これまでも不注意で転倒して骨折したことも何度もありました。憲子には私の命の司令塔として元気でいてもらわねばなりません。高齢者による交通事故が頻発しています。くれぐれも行き先を間違えないように(!)、そして事故を起こさないよう祈っています。