(イラスト:『教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで』より)
昨今、書籍や映画、ネット動画などを通じ、空前のホラーブームに。実はその恐怖の根底には、私たちの多くが知る「怪談」があるといえるでしょう。イザナミの祟り、四谷怪談、雪女、牛の首、口裂け女、生き人形、きさらぎ駅、そしてバックルーム……。もはや教養ともいえる怪談を、怪談の名手・吉田悠軌さんが厳選したのが『教養としての最恐怪談』です。今回その本より「四谷怪談」を紹介します。

夫から毒薬を盛られたお岩

かつて、お岩という哀しくも怖ろしい女がいた。

その夫である民屋伊右衛門)は希代の大悪人。実はお岩の父を殺害した犯人なのだが、それを隠して結婚し、男子をもうける。

しかし伊右衛門は隣家である伊藤喜兵衛の孫娘・お梅と結婚すべく、またもお岩を騙す。

喜兵衛と共謀し、産後の薬と偽ってお岩に飲ませたのは、顔が爛(ただ)れる毒薬だったのだ。

伊右衛門たちの裏切りを知ったお岩は、伊藤家に乗り込むべく鏡の前でお歯黒を塗り、髪をすく。しかしその体はもはや毒に蝕(むしば)まれきっていた。