似たような怪談が幾つも報告されていくように…
こちらの場合はトンネルを抜けておらず、ホームや駅舎に人がいて、周りには住宅もあった。
はすみが乗っていたのは静岡県、新浜松駅を出る遠州鉄道だが、今回は福岡県の久留米へ向かうJRだ。
「それでも駅の名前は『きさらぎ』だったのをはっきり覚えています」と投稿者は言う。
「オカルト的な意味のある駅名なんでしょうか? この世とあの世の接点とか? その駅で降りていたらどうなっていたかと思うと、とても恐ろしいです」
これを皮切りに、似たような怪談が幾つも報告されていくようになる。きさらぎ駅だけでなく、数多くの存在しない駅に迷い込んだという体験だ。
いつしかそれらの駅は、まとめてこう呼ばれるようになった。
異界駅、と。
※本稿は、『教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで』(著:吉田悠軌/ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
『教養としての最恐怪談 古事記からTikTokまで』(著:吉田悠軌/ワン・パブリッシング)
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