歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。10月号の書は「奥ゆかしさ」です。
「新しく装えど、心古き女」
10代の頃、「新しく装えど、心古き女」という言葉を聞き、胸を打たれました。よほど記憶に刻まれていたのでしょう。後年「東京」という歌の歌詞を書く際、その言葉を取り入れました。
新しい物事を受け入れる柔軟さや好奇心を持ちつつ、古きよき心のありようも大事にする人は、誰から見ても魅力的なはず。ここでいう「心古き」とは、美しい言葉遣いや上品な立ち居振る舞い、教養を大事にする精神や、奥ゆかしさのことです。
私が思う奥ゆかしい人とは、常に気配りをし、微笑みを忘れず、謙虚でいながらどんな事態も毅然として受け入れる芯の強さを持つ人です。
自分の意見や考えを声高に主張せず、生き方そのもので、人に想いを伝えていく。他人の領域に無遠慮に踏み込まないのも、奥ゆかしさの重要なポイントです。