(写真:stock.adobe.com)
毎日のように「物価高騰」が話題に上る今日この頃。その波は“国民食”ラーメンにも押し寄せています。集まらない従業員、原材料や水道光熱費の高騰、外国人観光客に向けた価格設定…。「長く言われてきた<1000円の壁>もすっかり崩れ去ろうとしている」と語るのが、全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライターの井手隊長です。今回はその井手隊長の新刊『ラーメン一杯いくらが正解なのか』から、今、ラーメンを取り巻いている「現実」についてご紹介いたします。

ラーメンは「スープ料理」?

ラーメンは一般的には麺料理だと認識されていると思うが、一方で「スープ料理」だと考えている店主、職人も数多い。それだけスープにこだわっているラーメン店が多いということだ。

かつての中華料理店で出されていたラーメンは、鶏ガラやくず野菜などを煮込んでスープを作っていたが、最近のラーメン専門店では、スープの食材にとことんこだわるお店が増えてきている。ブランド銘柄鶏や高級な乾物など、高級食材を使ってリッチな味わいのスープを作り上げているお店が多い。

見た目には気付かないかもしれないが、スープの中にかけられた食材のコストが昔とは全然違うのである。

近年ではスープの「分厚さ」がフォーカスされることが多い。味の濃い薄いではなく、ダシ感がどれだけ深いかでスープのリッチ感が変わるのである。

昔のラーメン店に比べて、ダシの旨味の強さが桁違いなのだ。ここ十数年でトレンドを作り上げた「鶏清湯」系ラーメンにおいては、スープに鶏と水しか使わない(「水鶏系」とも呼ばれる)ため、鶏のダシがどれだけ分厚いかが勝負になる。