鶴屋吉信 春の水

せせらぎにのって流れゆく桜花。
そのすがたをそのままに菓子に映して

桜といえば、満開はもちろんのこと、咲き初めから二分咲き、三分咲きとそれぞれの美しさがあるもの。散りゆくすがたもバラエティに富み、花吹雪、花嵐、花筏などとさまざまに表現されます。

この菓子が描くのは、川面に浮かぶひとひらの花。桜の語を使わぬ「春の水」という銘にも、奥ゆかしさを感じます。

淡色の桜の花と流水はこなし、中にはつぶ餡が入っています。こなしとは、関西の生菓子によく見られる素材で、白餡に小麦粉と餅粉、砂糖などを混ぜて蒸したもの。諸説ありますが、蒸してから熱いうちに揉みこなして作り上げるところから、この名があるようです。

関東でよく使われる練り切りに似ていますが、練り切りは白餡と餅生地を練り合わせたものです。いずれも細工がしやすく、いろいろなかたちが表現できます。