着心地のいいTシャツは肩ラインのパターンがいい
服のパターンは肩ラインから始まる
多くのTシャツは既製服です。企業は利益を上げるため、できるだけコストを抑え、手間を省いてTシャツをつくります。Tシャツはパーツが少ないアイテムですから、経験が浅い人でもつくれることはつくれます。実際、中国企業が率いるアジアの工場では、プロのパタンナー以外がパターンをつくることも、珍しくはありません。着心地の悪いハズレのTシャツが世の中にあふれているのは、そのためです。
しかし、Tシャツのように簡単なつくりのものでも、経験を積んだ技術者が手掛けると、驚くほど着心地のいいものが生み出されます。日本製の高品質なTシャツも同じです。プロのパタンナーが手掛けているからこそ、着心地のよさを感じられるのです。
では、プロと素人とでは、どんな違いが生じるのでしょうか? 第一に、プロが手掛けたTシャツは、肩まわりのパターンが非常に優れています。
服を設計する際、最初につくるのが肩まわりのパターンです。人間の肩に合ったパターンを、パタンナーはまず考えます。ファッション業界ではこれを、「肩ラインを設計する」とも言います。肩ラインは肩線とも呼ばれており、その名のとおり肩の曲線を指します。
肩のパターンの重要性はTシャツに限らず、パンツなどのボトムス以外の全アイテムに共通しています。なぜ肩ラインを最初に設計するのか。それは、肩ラインが着心地に大きな影響を与える要素である、立体感を生むからです。
肩ラインが適切に設計された立体的な服は、体によく馴染みます。パタンナーが肩ラインを体にしっかりと沿わせていれば、服は体の動きについていくようになります。
体の動きに逆らう服は、着にくいものです。当たり前だと思うかもしれませんが、案外忘れられている事実でもあります。実際に着心地の悪い服の構造を解明すると、体に逆らった設計がされていることが大半なのです。
さらに、肩ラインが整うと華奢に見える効果もあり、体型がより美しく見えるようになります。また、肩ラインが決まることで、他の重要要素である「衿」や「袖」のパターン・形も決まります。
このように、肩ラインは服の着心地の基礎を形成するために、重要な役割を果たします。だからこそ、「洋服は肩で着るもの」と言われるのです。