肩傾斜がないと服がずれて着心地は最悪
肩傾斜がある服は立体感が生まれ、着心地がよくなる。これを別の言い方で表現すると、適切な肩傾斜がある服は、肩や腕に「フィット感」がある、ということです。このことは、オーダーメイドの会社に勤めているとき、ジャケットやコートなどのパターンを通じて学びました。
フィット感と聞くと、体にピタッとする様子をイメージするかもしれませんが、ここでは、体の動きに合うかどうかを意味する言葉として使っています。
既製服をつくる際、パタンナーは人間の可動域に適したサイズ感を意識します。意外に思われるかもしれませんが、ゆったりとしたサイズ感よりも、フィット感があるほうが動きやすいのです。体に沿わないゆったりとしたゆるみは、逆に邪魔になり、着心地を悪くします。
また、肩傾斜はアームホールのラインにも重要な影響を与えます。アームホールとは、袖を通す穴のこと。この穴の周囲のラインも、肩傾斜が適切に設計されていないと直線的になって体にフィットせず、窮屈に感じることになるのです。
図をご覧ください。上が肩傾斜のあるアームホール、下が肩傾斜のあまりないアームホールです。穴の形が違うのがおわかりいただけると思います。上のように卵型になっていれば腕まわりにフィット感が生まれますが、下のような楕円の場合はフィット感が生まれず、腕が動かしにくいと感じてしまいます。
もし、肩まわりや袖付け部分がフィットしていないとすると、腕を動かすたびに服全体が動いてしまいます。肩傾斜がないために肩で服が安定せず、動くたびに服が後ろに引っ張られてしまうからです。その結果、フォルムが崩れて服の形が美しくなくなります。そして何より、着心地が最悪なものになってしまうのです。
残念ながら、肩傾斜のないTシャツは世界中に出回っています。特に多いのが、肩から袖が真横に伸びたフォルムです。人体の構造を無視しているので、非常に着にくい。にもかかわらず流通しているのは、服の知識が浅い人が設計を担当している、またはパターンが改善されずに使い回されているためです。
もし買い物に出かけて、同じ肩幅・サイズ感で気になるTシャツがいくつかあったら、肩傾斜に注目してみてください。「肩傾斜があるな」と思ったTシャツなら、腕まわりが動かしやすく、フォルムもきれいに見えることでしょう。ある程度慣れが必要ですが、経験を積み重ねることでいいパターンがわかるようになり、服選びを楽しむ幅が広がっていくと思います。
※本稿は、『なぜ日本製の服は着心地がいいのか』(彩図社)の一部を再編集したものです。
『なぜ日本製の服は着心地がいいのか』(著:リサ/彩図社)
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