日本で開発されている環境に配慮した合皮製品

ただし、メリットばかりではありません。合皮は動物愛護の観点では優れていますが、石油由来の素材を使用するため、製造や廃棄の際に環境負荷がかかる場合があります。

そこで現在では、環境に優しい「植物由来のヴィーガンレザー」など、より持続可能な素材の開発も進められています。

日本のファッション業界でも、環境負荷の軽減と持続可能性を重視した取り組みが、少しずつ進められています。石油由来の素材ではなく、植物やリサイクル素材による合皮開発が進められるようになりました。

たとえば、日本有数のりんごの産地である長野では、「りんごレザー」という合皮が開発されています。りんごジュース製造時の搾りかすを乾燥させて樹脂と混合することで、りんごレザーは生まれます。現時点では、バッグなどに利用されています。

このように、フードロス削減やCO2排出削減に取り組むサステナブルな素材として、合皮は世界中で評価されています。廃棄食品を活用した合皮(りんご、ぶどう、パイナップル、キノコ由来の素材)や、植物由来の合皮(サトウキビ、トウモロコシなど)なども開発されています。

また、廃棄された合皮やプラスチックを、新たな合皮の原料として再利用する試みもあります。ファッション業界は環境負荷の軽減を掲げているので、合皮はこれからも発展していく分野だと言っていいでしょう。

※本稿は、『なぜ日本製の服は着心地がいいのか』(彩図社)の一部を再編集したものです。

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