世界から注目される児島デニムの技術力
日本のデニムの代表的な産地は、児島(岡山県倉敷市)です。児島は「国産ジーンズ発祥の地」として知られている、デニムと藍染の名産地です。
この町で活躍する職人たちには、すばらしい魅力があります。糸の染め、織り、縫製、加工に至るまで、各工程に熟練の技が詰まっており、世界中のハイブランドからも注文が入るほど、高い技術を持っています。児島には私も何度か出張で訪れて、技術力の高さを目の当たりにしてきました。
児島の強みは、一貫生産体制にあります。町全体が工房のようになっており、糸染め、織り、縫製、洗い、加工まで、すべて地域内の工場・職人が完結させます。しかも、すべての工程で職人たちの高い専門性が活かされ、さらには緊密に連携しています。
織りの工程では昔ながらの織機を使い、時間をかけて丁寧に織っています。これにより、厚みと風合いがある高品質なデニムを生み出しています。大量生産の織機では、到底及ばない品質です。ヴィンテージ加工やクラッシュ加工なども職人の手で行われ、同じものがひとつとないのも特徴です。
また藍染にも、高度な職人技が光ります。天然の藍を使い、何度も染めと洗いを繰り返すことで、深みのある美しい青が出ます。これは「ジャパン・ブルー」と呼ばれています。その深い藍色は世界でも珍しい色味で、見る人の心を惹きつけます。使えば使うほどに美しい色へと変化していくので、長く親しむことができます。
児島の職人の多くは、「早くたくさんつくる」ことよりも、「一つひとつ丁寧に仕上げる」ことに価値を置いています。そんな丁寧な服づくりの精神が根づいているからこそ、児島の「分業×連携」の体制は、続いてきたのでしょう。
大量生産・大量消費が問題視されている今こそ、こうしたクラフトマンシップが再評価されるべきではないでしょうか。
