日本のパタンナー・縫製職人による工夫

日本のパタンナーの場合、バックヨークを立体的にするために、ダーツをうまく設けています。前ページ図の矢印で示した場所などに、ダーツが隠されています。生地に切り込み(ダーツ)を入れ、縫い合わせたときヒップの曲線に合うように、細かく調整する。そんな地道な作業を日本のパタンナーは得意としています。

また、優れたパタンナーは、ヨークのデザインに応じた調整も行っています。

バックヨークは、V字の深さを変えることで、印象を変えることができます。深めのV字はヒップまわりをすっきりとシャープに見せ、浅めのV字は柔らかでクラシックな印象に仕上がります。

こうした違いを考慮に入れて、パタンナーはヒップを高く見せるか、ウエストを細く見せるか、全体の印象をどう整えるかを考えています。その際はV字の傾斜が極端にならないよう、微細な調整を行って、デニムの見た目・着心地をよくしているのです。

こうした見えない部分にも、職人たちの工夫とこだわりが詰まっています。一見すると気づかなくても、穿いてみると違いがわかる。そんな面白さを感じ取っていただけるのが、日本製のデニムなのです。

※本稿は、『なぜ日本製の服は着心地がいいのか』(彩図社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
ハイブランドにも選ばれる「合成皮革」本革にはないメリットは?環境負荷軽減のため、りんごやぶどうを原料として活用するケースも
「肩がきつくない」「首が詰まってこない」日本製のTシャツの着心地がいい理由。シンプルながらとても奥深いアイテムで…
工場生産とハンドメイド、それぞれが持つ利点と欠点とは。大量生産をすれば独自性が失われ、手作業で生産すればコストがかかる。最適な生産体制を構築するには…

なぜ日本製の服は着心地がいいのか』(著:リサ/彩図社)

Xで何度もバズった服飾のプロが、日本製の服の知られざる魅力を大解剖。

着心地のよさを生み出す「設計の力」と、世界トップクラスの「縫製の力」に注目して、日本の服づくりの奥深さに迫る。

服選びがもっと楽しくなる、ファッション好き必見の1冊。