着物生活の隠れた恩恵

着物を着ることで自然に身に付いた「美しい佇まい」は、洋服姿のときにも自然に現れます。

着物で身に付けた、小さな歩幅で静かに歩く習慣は、パンプスを履いたときも安定感のある歩き方として周りに映るでしょう。物を取るときにも、自然にもう一方の手を添える動きが身に付いているので、洋服姿でも丁寧で誠実な印象をあたえることでしょう。

帯によって伸ばされた背筋は、スーツやワンピースを着ているときにも自信にあふれた立ち姿を生み出し、一方で肩の開いた柔らかな背中は優しさを感じさせてくれます。

私が幼いころ、祖母はずっと着物を着ていましたし、両親も家では着物を着ていました。50年くらい前までは、日本人は普段着物生活をしていたのです。

弊社では、仕事中はみんな着物を着ていますが、始まりは入社式の前日の3時間の「着付け教室」です。そこで手順を覚えて、翌日の入社式には全員自分で着物を着て参加します。

その後、二週間もすれば着付けにも慣れ、朝10~15分くらいで着つけると、一日中着物で過ごします。私は着物を着たまま車で通勤していますし、3時間運転して京都の着物問屋まで仕入れにも出かけます。

このように、着物の着付けはなにも難しくありません。自分で着ると締め加減が調節できるので全然苦しくもありません。それどころか、洋服のような密着感がなく、全身を空気が通る感じがして心地よい。私は本当に着物生活が心地よく、そのお陰で日々を穏やかに過ごせていると感じています。