自分は、一般的に言われる苦労を苦労とは思わないたちです。何かあっても、それは自分に新たな道が開ける好機で、ステップアップするということだから。たとえば勝ち越せない場所があっても、自分の身体をうまく使えていない理由や課題を考えてクリアすれば、次はいける。

怪我もマイナスではなく、チャンスだと思っています。入門したばかりのときは立ち合いの当たり方もわからなかったから、3~4年くらいずっと首を痛めていたんです。寝るときは、壁に頭を押しつけて首に負荷をかけるほうが痛みが和らいだので、当時は壁が髷(まげ)についたびん付け油で汚れていました。(笑)

でもその後、3年間ほぼ毎日、トレーニングジムに通って首を鍛えて筋肉をつけたことで、痛みは解消。首を痛めなかったら鍛えることもなかったから、結果としてはよかったんですよね。今も腰を痛めているけれど、これもいいこと。神さまが「ちょっと休みなさい」と言ってくれているのでしょう。

怪我をしていないのに、全然勝てなかった場所もあります。負けて負けて、もうどうしようかと思って……。そんなときは魂が抜けちゃっていると考えて、近所に自分探しの旅に出ます。体につらい思いをさせたり、美味しいものを我慢したりすると、「この体、嫌い」って魂が逃げていっちゃうと思うんです。

そんなときは、たとえば一人でフラッと自転車に乗って中華料理を食べに出かける。そうやって心身をリラックスさせるだけで、抜けていた魂が戻ってきて、前日までと打って変わって勝てるようになったりする。ただこれは、自分はそう捉えている、という話。深く掘り下げないでください。(笑)

後編につづく

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