認知症の母を施設に預けてラクになった息子さんの話
●「自分の手で世話したい」の限界
介護の仕事を10数年続けてきた中で、忘れられない出来事があります。
ある認知症の母親(86歳)とふたり暮らしをしている息子さんの話です。お母さんは要介護3で、息子さんは在宅で懸命に介護を続けていました。
しかし、介護の現実は想像以上に厳しいものでした。費用の問題もあって、毎日デイサービスやショートステイを利用するわけにはいかず、自宅での介護の日が多くありました。
それでも、息子さんは「自分の手で世話をしたい」という強い思いから、なんとかがんばっていました。
しかし、どうしても仕事に行かなければならない日には、母親をベッドに抑制帯で固定して出かけるしかありませんでした。そのたびに息子さんは「ごめんね……」と申し訳なさそうに母親に声をかけていました。想像するだけでも涙が出そうです。