笑顔で面会に来るのも、立派な介護

この出来事を振り返るたびに思うのは、介護職経験者である、お笑いコンビ・EXITりんたろー。さんの、「家でみるのも施設に預けるのも愛」という名言です。どちらの選択肢も、家族を思う気持ちがあってこそ成立するものです。

しかし、まだまだ「在宅介護=美徳」「施設に預ける=冷たい」という偏見が根強く残っています。

こうした考え方は、介護を行う家族にとって大きな負担となり、時に間違った方向に追い込むことにもなります。「在宅介護は立派」とか「施設に預けるのはかわいそう」といった価値観は完全に間違いです。

 

施設に入居しても、一生の別れではないし、家族との絆が消えるわけでもありません。ただ、暮らしの拠点が変わるだけです。むしろ少し距離をとることで、これまでよりも優しく接することができたり、冷静に相手を思いやる余裕が生まれることもあります。

親の介護で仕事を辞めた人、毎日眠れなくて体調を崩した人、ダメだとわかっていても手をあげてしまった人……。そんな方をたくさん見てきました。たまに面会に来て大笑いするだけでも、立派な介護です。

介護は家族だけで抱え込むものではありません。プロの手を借りることは、家族の幸せにもつながります。そして、家族の笑顔が増えることが、介護を受けるご本人にとっても大きな安心と喜びになるのです。

 

※本稿は、『読むだけで介護がラクになる本』(のぶ:著/すばる舎)の一部を再編集したものです。

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読むだけで介護がラクになる本(のぶ:著/すばる舎)

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Xで介護のコツを発信し、フォロワー3.7万人。同業者だけでなく、家族介護をする人たちからも支持されるのぶさん。介護現場での心温まるエピソードもまじえながら、「読むだけで心がラクになる」メッセージを伝えます。毎日の介護の負担をぐっと減らす実践的なアドバイスも満載。