洗練された空間は、こう演出する

【Less is more】とは、「少ないことは、より豊かなこと」という意味。

つまり、一つの棚に多くの商品を置くよりも、少ないほうが洗練されて美しく見えるという考え方です。

在庫は少しでも多く店頭に出してお客様の目に触れるように、とつい考えてしまいますが、そうすることで、ラグジュアリー感や美しさが損なわれる可能性があります。

売上アップのために多くの商品をディスプレイすることよりも、ブランド本来の世界観を表現するために、空間をデザインするという視点も大切です。

他にも、ガラスのショーケースを拭くためのスプレーボトルや布、店頭に置かれる資料やファイル、お客様情報を記入してもらう際に用いるボード、スタッフが使うボールペンも統一されたものであって、どれをとっても、ブランドの世界観を崩してはいけないという考え方が、ルイ・ヴィトンでは守られていました。

なぜならば、何万円もするお財布や何十万もするバッグを見にいらしていただいているのに、ペンを差し出された時に、いわゆる100円ボールペンだったら? 

一気に現実に引き戻されますよね。

東京ディズニーランドを始めとするディズニーパークでは、パークの外の景色が見えないように設計されている、という話を聞いたことはありませんか?

これは「イマジニアリング(Imagineering)」と呼ばれるディズニーの設計哲学の一部で、ゲストが現実を忘れ、完全に夢の世界に没入するための工夫だそうです。

店頭での接客体験もまさに同じことなのです。

ブランドの世界観を楽しんでいる時に、ふと100円ボールペンを渡されたら、外の景色が突然見えてしまって夢から覚めるような感覚になるはずです。

そのような哲学がルイ・ヴィトンの店舗にもありました。

※本稿は『「自分」というブランドを売る 元ルイ・ヴィトン トップ販売員が大切にしてきたこと』(大和出版)の一部を再編集したものです。

 

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「自分」というブランドを売る 元ルイ・ヴィトン トップ販売員が大切にしてきたこと』(著:土井美和/大和出版)

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