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「善意で言ったつもりが悪意として受け取られてしまった」「説明を真逆に解釈されてしまった」など、自分の言ったことが誤解され、上手く伝わらなかった経験はありませんか。「誤解を解くこと以上に大切なのは、『相手にどう伝わるか』を事前に考えることではないでしょうか」と語るのは、認知心理学を専門とする、三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授です。そこで今回は、先生の著書『なぜ、あなたの話し方は誤解されるのか~意図を正しく伝えるためのメタ認知』から一部を抜粋し、自分の意図を正しく伝えるコミュニケーションの方法をご紹介します。

「大丈夫」「ヤバい」は、どちらの意味か――多義的表現の誤解

大阪には、名物のたこ焼きを売るお店が、あちこちにあります。

たこ焼き屋の店員さんから、「マヨネーズ、おつけしますか?」と聞かれたあなたが、思わず「大丈夫です」と答えた時、店員さんはたこ焼きにマヨネーズをつけるでしょうか? それともつけないでしょうか?

このような場合、「大丈夫です」は、「つけても大丈夫です」「つけなくても大丈夫です」のどちらの意味にも解釈されます。

たこ焼き屋の店員さんが、「お客さんは、きっとマヨネーズをつけてほしいだろう」と考えていれば、「つけても大丈夫」と受け取るでしょう。

しかし、「つけてほしくないだろう」と考えていれば、「つけなくても大丈夫」と解釈する可能性が高くなります。

通常は、つけてほしければ首を縦に振り、つけてほしくなければ首や手を横に振るといった動作をすることが多いので、それが手がかりになります。

でも、店員さんはたこ焼きをひっくり返すのに忙しくて、お客さんの動作まで見る余裕がないかもしれません。

このように、飲食店の店員さんからの問いかけにお客さん側が答える際には、「大丈夫です」「いいです」といった言葉がよく用いられますから、誤解も多くなります。

誤解を防ぐためには、「マヨネーズをつけますか? つけませんか?」などと、わかりやすい質問をするとよいでしょうし、答える側も、「つけてください」「つけないでください」など、はっきりと答えることで意思表示が明確になるでしょう。