ちょっと手応えが怪しい
オグリキャップはスタートでちょっと出遅れた感じで最後方まで下がってしまったが、騎手の南井克巳によれば「いいほうだった」ということで、とくに心配もしなかったという。そこからインコースを進みながら中団の前まであがっていく。南井の手綱はずっと動いている。
やっぱり、疲れもあるのかな。ちょっと手応えが怪しいな――。
そう思った人は多いだろう。京都競馬場で取材していたわたしもそのひとりだ。なんだかんだ言っても、この2か月で4戦めなのだ。
レースはナルシスノワールの逃げではじまり、すぐにミリオンセンプーとトウショウマリオが争うように前にでる。このときオグリキャップは5、6番手の内を進み、そこからちょっと間が空いてバンブーメモリーが進んでいる。
レースの鍵となったのは4コーナーの位置取りだった。バンブーメモリーはスムーズに外に進路をとり、そのまま直線で先頭に立った。このときインコースで前にいた馬たちが壁になり、オグリキャップのスパートが遅れる。
「バンブーメモリーがスーッと上がって行ったのに、こっちはそんなに手応えがない」
4コーナーのことをそう振り返った南井は、「このごろ、4コーナーをまわるときの反応が鈍いんです」とも付け加えた。
直線に向いて先にスパートしたバンブーメモリーが抜けだし、遅れて2番手にあがってきたオグリキャップが内から迫る。しかし、その差はなかなかつまらない。直線のなかほどで2馬身ほどあった差は、ゴールまで100メートルをきっても変わらない。勝利が絶望的に見えたとき、オグリキャップは首を低く下げて、激しく前に迫る。一歩一歩バンブーメモリーを追いつめ、ゴールの瞬間、馬体を並べてしまったのだ。
贔屓目だったろうが、内側の灰色の鼻がすこし前にでたようにわたしには見えた。