「背伸びって大事よね。学校にも、憧れの先輩みたいな人が必ずいたじゃない? それをマネしておしゃれを磨いたりして。」(野宮さん)

野宮 私も最近、バンド名が読めないアーティストがいっぱいいる。

スー 私にとっての「わかんない」シリーズは、まず「若い男優の顔の区別がつかない」から始まりました。「この面白さがわからない」みたいな中身のことは、そのあとからやってくる感じですね。

清水 かつて母親が「この人、誰?」っていちいち尋ねてきた気持ちが、いまになってわかるでしょ。あの頃は「『月刊明星』の表紙を飾ってる人の名前を知らないなんて、どういうこと?」って思ってたし、自分は絶対母親のようにはならないはずだったんだけどなあ。

スー 結局はみんな同じ道を辿るんですね。でも歳を取ることがネガティブなことかと聞かれたら、おふたりをはじめ上の世代の人たちがみんな楽しそうなんで、私にとってはめちゃくちゃ「松明(たいまつ)」が明るいです。

還暦でもミニでいく

清水 松明って表現、面白いね。私にとっての松明って誰だろう。やっぱりユーミンさんとか矢野顕子さんとか森山良子さんとかかな。

野宮 明るくて、元気な松明だね。絶対消えないし、見失わないくらいの明るさ。

清水 それって、私にとっては本当にありがたい。だってずっとモノマネしてられるから(笑)。時代とともに、「この人、誰?」ってことに絶対ならないもん。

スー それにしても野宮さんや清水さんにとっての松明世代、強力すぎるなあ。

清水 いまの若い人たちって、ずいぶん心が清くなってるじゃない? 清いっていうのは物質的な依存が少ないという意味なんだけど。車がほしいとか広い家に住みたいとかじゃなくて、もう少し「生きること」に目が向いてる。私が10代の頃は憧れのカリスマみたいなものがいて、それに向かって少しはギラギラしてたから。

スー なるほど。たとえば私は子どもの頃、親に隠れて深夜番組を見てましたが、いまの中高生は何を見てるんでしょうね。つまり「大人っぽい」ということを、どこでやってるのかなって。

野宮 背伸びって大事よね。学校にも、憧れの先輩みたいな人が必ずいたじゃない? それをマネしておしゃれを磨いたりして。

清水 人類の物欲がいったん満たされたから、清い人が出てきたんじゃないかなって、私は考えてるんだけど。

スー しかもいまは昇給も鈍いし、非正規雇用も多いので、なかなか生活に余裕が持てない。だから急に年収が500万上がったとしても、彼らは車やブランドの時計を買ったりはしないかも。この先、どうなるかわからない時代ですから。