心臓のポンプ機能がさらに低下すると、今度は尿の出が悪くなる
ただ、心不全がさらに進行して心臓のポンプ機能の低下が慢性化すると、今度は尿の量が少なくなります。尿量が1日400ミリリットル以下になる「乏尿」と呼ばれる状態を招きます。
これは、心不全によって心拍出量(心臓から血液を送り出す量)が低下して、腎臓への血流が減少するため、尿の出が悪くなるのです。そうなると、体内に水分が溜まったままになって心臓の負担はさらに増加します。そこで、利尿薬を使って溜まった余分な水分を尿として排出させる治療を行います。このように、心臓と尿は深く関係しているのです。
また、心臓手術を実施する前には、必ず尿検査を行います。腎臓の状態を確認するのが目的で、とりわけ、ネフローゼ症候群でないかどうかに注意を払います。尿にタンパクがたくさん出てしまうことで血液中のタンパクが減り、低タンパク血症から低アルブミン血症や浮腫=むくみが表れる腎臓の病態です。
低アルブミン血症があると、手術時に生じる傷がくっつきにくくなり、合併症のリスクが増大します。そのため、術前の尿検査で尿中にタンパクが大量に出ている患者さんは、いったん手術を見合わせ、まずは腎臓内科で治療して腎臓の状態を安定させてから手術を実施する手順を踏みます。心臓手術においても、尿検査が大きな判断材料になっているのです。