尿中の糖分は安全な手術の実施にもかかわる

尿中にたくさんの糖分が確認できた場合では、2つのパターンが考えられます。ひとつは糖尿病があってきちんと血糖をコントロールできていないパターンで、こうした患者さんは手術による合併症のリスクが高いため、まず入院して血糖値を安定させてから手術を行うという手順を踏むケースが多くあります。

もうひとつが糖尿病の治療のために「SGLT2(エスジーエルティーツー)阻害薬」を使っているパターンです。SGLTとは、「ナトリウム・グルコース共役輸送体」というタンパク質の一種で、尿から血管内へ糖分を運ぶ物質です。SGLT2阻害薬は血中の糖分を尿に排出する作用があり、服用中の患者さんは尿糖の数値が跳ね上がります。ただ、薬で血糖をきちんと管理できているわけですから、手術によるリスクがアップするわけではありません。

尿検査の結果を正しく判断してもらって安心、安全な手術を受けるためにも、普段どんな薬を使っているかを必ず医師に伝えてください。

※本稿は、『血管と心臓 こう守れば健康寿命はもっと延ばせる』(講談社ビーシー)の一部を再編集したものです。

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