「ブルーベリー農家を始めたい!」
恐る恐る妻に問いかけた。妻は夫の顔を見返す。いったい何ごとじゃ。二人とも農業に関してズブのシロウトである。まして乳飲み子を抱えている今、どうやってブルーベリー生産者になれるというのか。疑問と不安はたんまりあったに違いない。でも、切実な様子の夫を前にして、無下に反対するのも憚られた。
「ま、いいんじゃない?」
そう応えたときの夫の笑顔たるや。
「めったに見せたことがない、なんともいえぬ嬉しそうな夫の顔を見たとき、こりゃ、ついていくしかないなと腹が据わりました」
その後、夫婦は幾多の試練を乗り越えて、幼い子供を抱えながら荒れ地を耕し、ご近所と積極的に交流し、懸命に働いて、今や地元でも人気のブルーベリー生産者になった。
