目に見えない力に引っ張られて

芝居の世界に入ったのは24歳のとき。高校を卒業して建設会社に入ったものの肌に合わずに辞めました。そのうち、子どもの頃から面白いことをするのが好きだったからでしょうか、ぼんやり芸能界に憧れるようになったのです。

たまたま大阪で柄本明さんの芝居を観たのですが、「こんなにちっちゃい声で喋るのか」とびっくりして。月謝1万円にも惹かれ、和歌山から上京し、柄本さんが座長を務める「劇団東京乾電池」の研究生オーディションを受けました。

3年で退団したあとは、九十九一(つくもはじめ)さんと出会い、九十九さんの縁で村松利史さんの演劇ユニット「午後の男優室」に参加。村松さんの縁で山内ケンジさんプロデュースの「城山羊の会」に出演、その山内さんの芝居を観に来ていたのが、『エルピス』の演出の大根仁さんだった、というふうに繋がっていくんです。岩谷さんとの出会いも九十九さんですし、そこからふじき君と縁ができていきました。

『ばけばけ』で、語りの蛇と蛙として登場する阿佐ヶ谷姉妹とは、乾電池の研究所の同期として出会っています。一緒にカラオケに行ったりしていて、えりりん(渡辺江里子さん)が歌が上手なことも、キムミホ(木村美穂さん)のちょっと変な面白さも知っていましたけど(笑)、まさか2人が芸人になるなんて思ってもいなかった。

だから僕が隣のテーブルのたこわさを失敬していた頃に、テレビに出ている2人を観たときは驚きました。のちに、『ボクらの時代』というトーク番組に3人で出たときは、まさかこんなことが起きるとは、人生何が起きるかわからないなと、本当に思いました。

ましてや今回は朝ドラ共演ですよ。別に「いつか同期の阿佐ヶ谷姉妹と一緒に朝ドラに出るぞ!」なんて思って生きてきてませんからね(笑)。たとえそれを目標にしていたとしても、叶うようなことではないと思うので。やっぱり、何かわからない力が引っ張ってくれたんだろうなとしか思えません。

そういう目に見えない力を、歳を重ねるにつれて信じるようになってきていますね。おばけや霊の類いのことはわかりませんけど、たとえば、誰かに対して、何もしてあげられない、祈ることしかできないときもある。

病気とか出産とか、そういうときはもう、「無事でありますように」と祈るしかない。その祈りや念みたいなものを、僕は信じているところがあるんです。

後編につづく

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