僕が演じている松野司之介は、松江藩の上級武士だったけれど、明治になって時代の変化に取り残されている男です。極貧暮らしになってもお金を稼げない、いわばダメな父親。娘のトキに対してさえ甘えているような。
そんな役どころもあって、撮影していてもトキ役の高石あかりさん、母親・フミ役の池脇千鶴さん、そして祖父・勘右衛門(かんえもん)役の小日向文世さんが、何をやっても受けて返してくださる。僕自身もその懐の大きさにどこか甘えておちょけたりしながら、好きなことを自由にやらせてもらっています。
みなさんとのお芝居が本当にしっくりくるので、どんどん発想も広がっていく。おかしみと哀しみが一緒くたになったような司之介は、たぶんふじき君が僕をイメージして書いてくれているのでしょうし。光栄に思いながら演じています。
『ばけばけ』が伝えているものは、「この世はうらめしい。けど、すばらしい。」というキャッチコピーに凝縮されているんじゃないでしょうか。貧しくても、嫌なことがあっても、つらくても、一生懸命真面目に生きているからこそ生まれる人生の機微がある。
松野家は商売に失敗し借金だらけになって、お城から離れた橋の向こう側に引っ越します。家は狭くて暗くて、壁に穴が開いていたり蜘蛛の巣が張っていたりするんです。だけどそこで家族がギュウギュウになって寝るシーンを撮っていると、合間に本当に寝てしまったりするし(笑)、よくしゃべるし、現場でますます仲よくなるんですよね。
その僕らが演じる家族の姿を通して、大きな幸せはないかもしれないけど、肩を寄せ合って生きるのもなんだかいいな、と思っていただけたらうれしいです。