私が乗ったパラグライダーの後ろにはインストラクターがついてくれている。すべてを委ねるように、空へ体を乗り出した。ふわっ、と宙に浮く。
ヤッホー! 私は鳥になった。風に乗って、右に左に、自由に移動ができる。飛ぶ、というより浮遊している感じだ。こんな体験、したことがない。
スタート地点では、夫と娘がこちらを見つめているようだ。私は思いっきり手を振った。山々を見下ろし、田んぼには私とインストラクターの影だけがあり、青空が私たちを見守っている。こんな幸せなことはない。本当に貴重な体験だ。
それから、私は生まれ変わった。病気になった時は、なんで私がこんな目に遭わなければならないのか、と悔いたり恨んだり。もはやぐちゃぐちゃの精神状態だった。家族がかけてくれる温かい言葉にも、「あなたたちは何もわかってない」と反発していたものだ。
でも、パラグライダーで空を飛ぶという経験をしたことで気持ちが軽くなり、前向きになることができた。今も車椅子生活だが、限られた状況でも、もっとほかにできることがあるはずと、新しいことを探し続けている。