私が乗ったパラグライダーの後ろにはインストラクターがついてくれている。すべてを委ねるように、空へ体を乗り出した。ふわっ、と宙に浮く。

ヤッホー! 私は鳥になった。風に乗って、右に左に、自由に移動ができる。飛ぶ、というより浮遊している感じだ。こんな体験、したことがない。

スタート地点では、夫と娘がこちらを見つめているようだ。私は思いっきり手を振った。山々を見下ろし、田んぼには私とインストラクターの影だけがあり、青空が私たちを見守っている。こんな幸せなことはない。本当に貴重な体験だ。

それから、私は生まれ変わった。病気になった時は、なんで私がこんな目に遭わなければならないのか、と悔いたり恨んだり。もはやぐちゃぐちゃの精神状態だった。家族がかけてくれる温かい言葉にも、「あなたたちは何もわかってない」と反発していたものだ。

でも、パラグライダーで空を飛ぶという経験をしたことで気持ちが軽くなり、前向きになることができた。今も車椅子生活だが、限られた状況でも、もっとほかにできることがあるはずと、新しいことを探し続けている。


※婦人公論では「読者のひろば」への投稿を随時募集しています。
投稿はこちら

※WEBオリジナル投稿欄「せきららカフェ」がスタート!各テーマで投稿募集中です
投稿はこちら

【関連記事】
甘えた記憶がなく、嫌いだった母の突然の死。涙も出ない告別式の後、見つけた「私の宝物」と表紙に書かれたノート。その内容に心の底から泣いた
脳出血後のリハビリのため、介護施設に入所してきた70代の元社長。上から目線が困りものだが、60代の看護師に恋をして、まさかの行動に…
18歳で運転免許を取り、70歳の今は運転歴53年目に。返却せずに取っておいたこれまでの免許証。昭和、平成、令和と見返して思わず笑ってしまうのは